水底の歌(みなそこのうた)
2017/6/4 俳写倶楽部定例会-96回 ※プリント用
水底の歌(みなそこのうた)
「俳写の素材は、どこにでもころがっています。」と常々言っている手前、日常の中の講習作品のテーマ探しには苦労致します。散歩途中の花ばかりの俳写では、どうもマンネリ化を避けられません。なにか趣向の変わった世界がないものかと、寝転がって天井をボンヤリ眺めていますと、風に吹かれた金魚鉢の水面が、天井にキラキラと反射しているではありませんか! 今回は張本人がころがって素材探しをしたことになります。
早速カメラで天井を集中して撮影しているうちに、若干めまいを起こしたのでしょうか、天も地も無く左右も無い水中の底にユラリと横たわった様な‥‥、土左衛門になった様な‥‥、妙な気分になりました。この困った状態の折りに浮かんだ句をメモしておきました。
● 水底の歌もたゆたふ五月風 尊晴
結局、最後まで修正も推敲もせぬまま、最初に浮かんだ「水底の歌」という本の題名を使用しました。四十数年も前に読んだ本の記憶とともに、ゆっくりと海底から浮かび上がって来た「柿本人麿」歌聖のご協力にお礼を申し上げます。
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「水底の歌」 哲学者・梅原猛の著した柿本人麿(飛鳥時代の歌人)に関する評論。 柿本人麿は鴨嶋(かもしま)という島根県の小島に流罪となり刑死したという大胆な解釈の本。 1973年出版。 |
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